犬にとってのニンニクは本当に危険なのか?
― ”フェルフェライン”のガーリック成分の真価と安全性を探る ―
はじめに:ニンニク=危険という“常識”は本当か?
「ニンニクは犬に与えてはいけない」
この見解は広く流布しており、多くの飼い主がニンニクに強い警戒心を抱いています。しかしこの常識の根拠となっているのは、2000年のLeeらの研究や2005年の山本らの報告に基づくものであり、この実験について掘り下げました。
本稿では、ナパ―ニのオーガニックブレンドオイル「フェルフェライン」に含まれるガーリックの役割について、科学的エビデンスと摂取量の実態から再評価し、誤解を解きながらその利点と安全性を明らかにします。

1:論文内容の検証
おそらくニンニク=危険という常識の根拠となった理由として2000年に出された論文『Lee KW, Yamato O, Tajima M, Kuraoka M, Omae S, Maede Y. イヌへのニンニク抽出物の胃内投与後に偏心赤血球の出現に関連する血液学的変化』が起点になったのではと考えられます。
1-1. Leeらの研究(2000年)とその条件
Lee KWらは、ビーグル犬4頭に対して、ニンニク抽出液1.25mL/kgを7日間連続で経口投与した結果、赤血球のHeinz小体形成や溶血、軽度の貧血を報告しました。
この抽出液1.25mL/kgが示す意味を理解するには、どのくらいの生ニンニクに相当するかを見積もる必要があります。
生ニンニク1片の重さは平均して約5gです。本稿では、抽出液が生ニンニク中の有効成分を濃縮したものであると仮定し、その抽出効率を10%と見積もっています(つまり、生ニンニク100gから約10mLの抽出液が得られるという前提です)。
ここで設定した抽出効率10%という仮定は、文献や食品加工業界で一般的に用いられる粗抽出の目安に基づいており、水、エタノールなどの培養によって抽出される成分が全体の質量の約10%程度とされることに由来します。(ただし、実際の抽出効率は使用する方法や溶媒、原料の状態によって大きく異なるため、この仮定はあくまで推定計算における便宜的な設定値とご理解ください。)
- 1.25mLの抽出液 ≈ 生ニンニク12.5g/kg相当
この仮定に基づいて換算すると:
- 体重20kgの犬 → 毎日約250gの生ニンニク相当
- ニンニク1片5gとすれば → 1日50片相当
つまり、Leeらの実験は20kgの犬に1日50片のニンニクを1週間連続で与えるのと同等の極めて非現実的な条件だったのです。
1-2. 人間に置き換えると?
成人男性の平均体重を60kgとした場合:
- 60kg × 12.5g = 750g(1日あたり)
- ニンニク片換算で約150片/日を1週間
人間が毎日ニンニク150片を食べ続ける状況を想像すれば、この実験の条件がいかに極端か理解できるでしょう。
2:日常的な摂取量はどの程度か?実用レベルでのリスク評価
2-1. 一般的なニンニク1片の重さ
- 1片あたり:約5g(大粒で6〜7g、小粒で3〜4g)
- 体重20kgの犬であれば、実験と同等の摂取量(250g)は36〜80片分に相当します。
これを毎日食べる犬は、自然な食事環境下ではまず存在しません。
2-2.犬に対するニンニク使用の安全量設定とは?
「犬にニンニクは危険」という通説はよく目にしますが、その背景には「量によっては安全」という事実もあります。このコラムでは、科学的にも依拠される「NOAEL」と「LOAEL」についてわかりやすく解説し、実際にどのように安全量を設定するかを述べます。
まず、安全量設定の基本方針として、NOAEL(無毒性量)を基準とし、そこからさらに1/2〜1/3に減らした量を「推奨安全量」とする考え方を採用します。これにより、個体差や長期摂取リスクもより慎重にカバーすることができます。
2-3.NOAEL、LOAELとは何か?
NOAEL 無毒性量 | 実験で悪影響が確認されなかった最大量 |
LOAEL 最小毒性量 | 実験で初めて悪影響が見られた最小量 |
「ここまでなら安全」と言えるのがNOAEL、「これを超えると危険」という分段点がLOAELです。
2-4.ニンニクに対するデータ例
Leeらの研究(2000年)では、犬に対して体重1kg当たり生ニンニク換算12.5gの抽出液を7日間連続投与した結果、軽度の溶血が確認されました。これは非常に高用量かつ連続投与という現実離れした条件下での結果であり、通常の摂取環境とは大きく異なります。
この12.5g/kgという数値をLOAEL(最小毒性量)と見なし、安全量を設定するためにはさらに厳密な配慮が必要です。
2-5.NOAELを導出する方法と推奨安全量
現時点においてLeeらの研究におけるLOAELしか分かっていないため、安全側に立ってまず10分の1に設定し、NOAEL代替値とします。
- LOAEL=12.5g/kg
- NOAEL代替=1.25g/kg
さらに実際の使用では、個体差や慢性影響を考慮し、このNOAEL代替値の1/3程度に減らした量を推奨安全量とするのがより慎重な対応となります。
- NOAEL 1.25g/kg
- その1/3 = 約0.42g/kg
2-6.最終的な一日の安全量の結論(体重1kgあたり)
体重1kgあたり、生ニンニク換算で約0.4g以下/日を推奨安全量とします。
- 体重5kgの犬であれば、
- 0.4g × 5kg = 2g以下/日 が安全な範囲となります。
これは生ニンニク1片(約5g)の半分以下のごく少量です。
3:ガーリックのもつ薬理効果
3-1. 抗菌・抗酸化作用
ニンニクには、アリシン(Allicin)という有効成分が含まれ、以下のような効能が報告されています:
- 抗菌・抗ウイルス作用
- 消化促進作用
- 血流改善・高血圧抑制作用
- 抗酸化による老化抑制
人間の栄養学においてはもちろん、動物栄養学においても微量成分として有用である可能性が示唆されています。
3-2. 寄生虫対策・虫除けとしての利用
民間療法の世界では、ニンニクは「体臭を変えることで虫除け効果がある」とされ、馬・羊・犬などの飼料に微量添加されるケースがあります。
4:ナパーニ「フェルフェライン」に含まれるガーリックは危険か?
4-1. 含有量の目安
ナパーニのオーガニックブレンドオイル「フェルフェライン」には、以下のような構成成分が含まれています
- 有機ブラッククミンシードオイル(ベース)
- 有機オレガノオイル
- 有機ガーリックオイル(微量)
オイルに配合されている「ガーリックオイル」は、一般的にニンニク全体の0.1〜0.3%程度の抽出成分であり、1日あたりの給餌量に換算すると、犬の体重20kgであっても生ニンニク0.1〜0.2g相当以下となることが予想されます。
4-2. 安全域との比較
体重20kgの犬における「毒性リスクが出るライン」は100g以上(1回摂取)とされており、それに比べるとナパーニ製品で摂取する量は500〜1000分の1以下。
これが毎日摂取されたとしても毒性域には遠く及ばないのです。
5:通説の再考と情報リテラシー
「ニンニク=毒」「与えてはいけない」は、正確には「過剰摂取が毒になりうる」という話であり、これは水や塩でも同様です。重要なのは”量”と“目的”と“継続性”であり、これを無視した「ゼロか100か」の議論は、本来の栄養学・毒性学とはかけ離れたものです。
フェルフェラインは、ナパーニがドイツの獣医師や栄養士と連携し、「犬にとって安全かつ有益であること」を前提に開発した製品です。製品に含まれるガーリックは、害を及ぼす量ではなく、生理的効果を補完する機能性成分としてごく微量が使用されています。
おわりに:知識に基づいた判断が、ペットの健康を守る
ニンニクは「与え方」と「量」に注意すれば、決して“害しかない”成分ではありません。
それどころか、適切な量であれば「体の内側から強くする」可能性を秘めた、伝統的かつ機能的な自然素材です。
ナパーニの「フェルフェライン」は、そうした素材を最大限に活かしつつも、動物の健康と安全を最優先に設計された製品です。どうか誤解に基づく偏見ではなく、科学と事実に基づいた判断で、愛犬・愛猫の健康と向き合っていただければ幸いです。